訴求軸の洗い出し方:「WHO-WHAT表」で、誰のどんな課題に何を言うかを12行にする
広告の訴求軸を決めるとき、「価格で押すか、品質で押すか」のように、いきなり言うことから考えていませんか。この順番だと、出てくる案はたいてい競合と同じになります。
私は訴求軸を考える前に、**誰の(WHO)、どんな課題に、何を言うか(WHAT)**を1枚の表にしています。これを「WHO-WHAT表」と呼んでいます。この記事では、その作り方を手順どおりに紹介します。
例には、架空の「ミールキットの定期便」を使います。
先に「誰に」を4つに分ける
最初にやるのは、ターゲットを4つのクラスターに分けることです。対象は「すでに興味を持っている人」以上に絞ります。まったく関心のない層まで入れると、話が広がりすぎて訴求が決まりません。
| クラスター | どんな人か |
|---|---|
| 共働き夫婦 | 平日の夕食づくりに時間をかけられない |
| 子育て中の親 | 子どもが食べられる献立を毎日考えるのがつらい |
| 一人暮らし | 自炊したいが、食材を余らせてしまう |
| 休眠ユーザー | 一度使ったが、解約や休止をしている |
4つにするのは、少なすぎると見落としが出て、多すぎると1つずつ深く考えられなくなるからです。
クラスターごとに、課題を3つ出す
次に、クラスターごとに課題を3つ出します。このとき、課題と一緒に「いつ・どこでその課題が起きるか(ユースケース)」を書くのがポイントです。
たとえば共働き夫婦なら、こうなります。
| 課題 | いつ・どこで |
|---|---|
| 献立を考える気力がない | 平日の帰りの電車で、今日の夕食を考えるとき |
| 買い物に行く時間がない | 仕事が長引いて、スーパーの閉店に間に合わないとき |
| 外食や総菜が続いて罪悪感がある | 週末に、1週間の食事を振り返ったとき |
「時間がない」とだけ書くと、どの商品にも当てはまります。「帰りの電車で、今日の夕食を考えるとき」まで書くと、広告を見せる場面とコピーの言葉が具体的になります。
4つのクラスター×3つの課題で、表は12行になります。
課題ごとに、言うこと(WHAT)を埋める
12行それぞれに、次の項目を埋めます。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 便益 | その課題が、商品でどう解決するか |
| 訴求の方向 | 便益をひとことで言うと何か(時短、手軽さ、安心など) |
| 代替品 | その人が今、代わりに使っているもの |
| 差別化ポイント(POD) | 代替品と比べて、この商品だけが言えること |
| 根拠(RTB) | 差別化ポイントを信じてもらえる事実 |
この中で一番大事なのは「代替品」です。共働き夫婦の「献立を考える気力がない」に対して、代替品は競合のミールキットだけではありません。総菜、外食、冷凍食品、献立アプリも代替品です。
代替品をはっきりさせると、差別化ポイントも変わります。総菜と比べるなら「自分で作った実感がある」、献立アプリと比べるなら「考えるだけでなく、食材まで届く」が言えることになります。
「根拠」には、LPや商品資料に書いてある事実だけを入れます。「調理15分」のような数字や、受賞歴、利用者数などです。根拠が書けない差別化ポイントは、広告では言えません。
最後に「どう見せるか」と検証の仮説まで書く
言うことが決まったら、同じ行に「どう見せるか(HOW)」も書いておきます。
- メインコピー(15字以内)とサブコピー(20字以内)
- 表現の方法(写真、イラスト、利用者の声風、比較表など)
- 静止画か動画か
- 検証の仮説(例:「帰り道の場面で見せると、CTRが上がる」)
コピーの字数を先に決めておくのは、バナーに入れたときに読み切れる長さに収めるためです。
検証の仮説は、指標とセットで書きます。これがあると、配信したあとに「何が分かったか」を言えるようになります。仮説と結果の管理の仕方は、広告クリエイティブの検証の管理方法にまとめています。
12行から、最初に作る4本を選ぶ
12行ぜんぶを一度に作る必要はありません。私は優先度の高い順に4行を選び、まずバナーを4本作ります。
選ぶときは、クラスターがなるべく重ならないようにします。4本とも共働き夫婦向けにすると、どのクラスターが反応するかが分からなくなるからです。
配信して結果が出たら、勝った行は表現を変えて増やし、残りの行から次の4本を選びます。12行の表が、そのまま検証の順番表になります。
表を作るときに生成AIを使う
12行×項目をすべて手で埋めるのは、なかなかの作業です。私は、LPのURLを入れると市場・競合の整理からクラスター、12行の表までを順に作る生成AIの仕組みを使っています。7つのステップを確認しながら進めて、1案件あたり35分ほどでたたき台ができます。
ただし、生成AIに任せるのはたたき台までです。特に「根拠」は、AIがもっともらしい数字を作ってしまうことがあるので、LPや資料に本当に書いてあるかを必ず確かめます。どの行を選ぶかも、人が決めます。
生成AIを使った制作フローの作り方は、noteにも書きました。
生成AIで、バナー制作の時間を60%減らした仕組みの話(note)
まとめ
- 訴求軸は「何を言うか」からではなく、誰の、どんな課題かから考える
- ターゲットを4クラスター×課題3つ=12行に分け、課題には「いつ・どこで」を付ける
- 行ごとに便益・代替品・差別化ポイント・根拠を埋める。根拠は事実だけ
- コピーの字数と検証の仮説まで書き、12行から4本ずつ作って検証する
ぷらるでは、WHO-WHAT表を使った訴求の設計から、バナー・LPの制作、検証の運用までをお手伝いしています。「訴求がいつも同じになる」という段階からご相談ください。